岐阜県南西部の瑞穂市にある朝日大学の校舎の改修計画である。
改修の対象となったのは、キャンパスの正門から正面に位置する1号館である。
この建物は1971年に竣工、1996年にファサード・エントランスホール改修工事が実施されており、ほぼ30年ぶりの大幅なファサード・エントランスホールの改修計画となった。
元のファサードは石調の吹付塗装が全面に施され、鏡面仕上のステンレスの帯がアクセントとして使われていた。また、1階エントランスホール部分の屋根となる大きな庇には金属製パネルの幕板が張られていた。
このファサードを改修するにあたり、大学側からは
・ヒノキ、恵那錆石等の岐阜県の名産材の使用
・ファサードは定期的なメンテナンスがしにくいため、仕上は耐久性が高い材料とする
・今後の朝日大学を表現するようなファサード
という要望があった
これらの要望をふまえ、ファサードには耐久性が高い人工木材ルーバーを全面に使用し、恵那錆石を部分的に使用することを提案し、承諾を得た。ただし建物を正面から見たときに、大学からの要望を表現するには、ルーバー材は細すぎるため存在感が不足する懸念があった。そのため、ルーバー材の最小から最大まで全ての断面寸法を用い、あたかも大木が並べられているかのような大胆な意匠を試みた。
ルーバー面の背景となる建物本来の外壁面は、明るい色の石材調塗料で再塗装した。
ファサードの改修に合わせ、サインもすべて改修した。ファサード向かって左上に内照式の大学校章を設置し、庇の中央先端の校名サインは国際交流の活発な大学であるため、英文表記として海外からの訪問者に対して視認性を高め、装いを新たにした。
また、この建物を訪れる人の目に近い位置となる、1階の建具の並びにある柱と、庇の先端部分の幕板を恵那錆石で被覆することで、岐阜県産の材料をアピールする意図とした。
1階部分は、既存のレンガ風タイルの壁によって内部が暗いため、壁は撤去してガラスファサードとし、内部に日光をふんだんに採り入れる計画とした。利便性向上のため、既存の両開き戸はガラスの両開き自動ドアに改修した。
エントランスホールの内装は、ファサードのルーバーがそのまま継続しているような意匠とするよう要望があった。内部であるため、岐阜県産のヒノキを無垢ルーバー材として全面に使用し、ファサードの意匠との統一感を出す意図とした。天井仕上も岐阜県産ヒノキの無垢羽目板を使用した。床・壁は明るい色で仕上げ、ガラスファサードによる採光を活かす意匠とした。
庇の上裏は内部の天井と全く同じヒノキの羽目板張りとし、内外の継続性を高める意匠とした。
エントランスホールの設備計画も全面的に改修した。照明設備と空気調和設備は、エントランスホールの南北方向に長い形状であり、また、その南北が動線の方向でもあるため、ライン照明とブリーズラインを南北方向に一直線状に配置した。これにより、シャープかつスピード感のあるような動的な印象を感じられることを狙った。
外観の照明については、大学を訪れる人にとって印象的な夜景とするため、壁面全体を下から照らし、手前にあるルーバーが浮かび上がって見えるような計画とした。校名サインも下から照らし、夜間に遠くから見ても目立つようにした。
このような計画を通して、ルーバー材を用いて大学の軽やかさと大胆さを同時に表現し、同時に恵那錆石のような伝統的な材料を用いて、学術の重厚さのようなものも表現することができたとしたら幸いである。