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名称

焼鳥 火團

主要用途

飲食店

照明設計協力

中島龍興照明デザイン研究所

改修対象面積

35.23㎡

所在地

東京都港区

意匠設計

栄澂建築一級建築士事務所

竣工年

2023年

施工

東熱パネコン株式会社

撮影

平井広行

焼鳥 火團

ミシュランガイド掲載の焼鳥の名店「やきとり阿部」グループの4号店の内装設計である。ビルの2階に位置し、大きなガラスを通して目の前の街路樹がよく見え、季節感を演出できそうな魅力的な区画であった。

ただしコンパクトな区画であるため、要求されたカウンター8席の客席、焼き場、焼き場と分離した厨房、事務室という機能を全て納める工夫が必要であった。結果として、厨房をL字型に配置することで解決した。

また、排気ダクトを隠蔽したいという要望を解決するため、排気経路のほか、焼台の寸法・仕様、カウンター・椅子の寸法等はグループ店の状態をすべて見学し実測した。排気ダクトは客席の床下を通す設計としたため、客席の床レベルを上げたが、これは板前とお客様の目線を合わせることにもつながった。

客席床を上げたが、できる限り天井高を確保し広い空間とするため、換気・空調はそれぞれ厨房・事務室に機器を置き、客席の壁面に最小限の制気口を設ける計画とした。

お客様が常に見る、板前の背後の壁面を特徴ある意匠としたいという要望もあった。このお店では炭火で焼くということで、熱を帯びた炭火の色、そして火が通ってほんのり赤らんだ鶏肉の色を想像し、赤い左官壁、それも異なる濃度の層がグラデーション状に重なる「塗り版築」と呼ばれる技術を用いた壁を採用した。グラデーション状の赤みを帯びた壁が、ここでしか味わえない、絶妙な火の通り具合の焼鳥の温度感とマッチすることを狙った。

カウンターはタモ無垢材1枚板を用いた。樹皮の自然な形状の「耳」付きでありながら、比較的直線的な形状で、コンパクトな店内でも面積をとらない材であった。短辺の極端に短いL字形状で、通常は45度留めで継ぐが、木目を揃えて継ぐことで一枚板を切り出したように見せる工夫をした。

客席・焼き場の天井は既存の梁の部分がどうしても出っ張るため、あえて木の梁が一定間隔で並ぶように造作し、その間を木目天井板の目透かし張り風とした。床・天井は明るめにし、床は燻したような色合いの竹フローリングで重力感を出した。他の仕上もできる限り自然素材で日本らしい見た目、かつメンテナンスしやすい材料を選定した。

開店直前、大きめの植栽が窓際に活けられ、ガラス越しの街路樹の緑と完璧にマッチし、この素晴らしい立地とこの店舗が視覚的につながった印象を受け、感銘を受けた。

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